印刷紙器の長所である美粧性とダンボールの機能性を持ち合わせたものが=美粧ダンボール。
美粧ダンボールとは一般的に「美粧印刷された板紙等を片面ダンボールに貼合したダンボール製品」のことを言います。印刷紙器の長所である美粧性とダンボールの機能性(製品を守る・軽さ・保温保冷性)を併せ持った製品です。デザイン性やブランドイメージを前面に出した配送箱や化粧箱、ディスプレイ什器など幅広い用途に使用できる製品です。このページでは一般的な美粧ダンボールの印刷方式に加え、美粧性の高いダンボール表現の方法を紹介したいと思います。
■ 主なダンボール印刷の種類
❶ オフセット印刷(4色フルカラー・特色)
国内外ともに最も普及している印刷方式で大量印刷に向いています。雑誌、書籍、カタログ、ポスター、パッケージ、紙製什器など様々なところで活用されています。オフセット印刷は通常、C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)の4色版とプロセスインキを使用して写真や文字などを美しく出力する方法です。また特色インキと言われるカラーチップ(DIC/PANTONE/TOYO INKなどの色見本)に合わせて調色したインキを使用して印刷することもできます。メタリックや蛍光色などもあり、通常のプロセス4色印刷ではうまく表現できない色を特色印刷で表現します。1色あたりのコストはプロセスインキより高額になります。印刷面の保護と特殊な美粧表現が可能な表面加工を組み合わせることにより多彩な表現が可能となります。印刷する紙のバリエーションも含めると美粧表現の自由度は計り知れないものがあるのもオフセット印刷の特徴です。それでは、このあとオフセット印刷を使用して美粧ダンボールへ製品化するための主な方法を紹介します。
■ 板紙オフセット印刷(合紙) 【小ロットにも対応】
■ オフセット輪転印刷(巻取印刷)【大ロット向き】
■ダイレクト印刷
❷ フレキソ印刷
ダンボール印刷の主流がフレキソ印刷です。オフセット輪転印刷と同様、ダンボールシートに貼合する前の原紙に巻取印刷する方法(プレプリント)とダンボールシートにしてから1枚1枚印刷する枚葉印刷(シート印刷)の2つの方法と対応する機械があります。フレキソ印刷は主に水性インキとゴム・樹脂などの弾性物質でできた版を用いる凸版印刷方式です。版に弾性があるため、厚紙やダンボールなどの平滑性の悪い紙、その他、プラスチックフィルム、布などにも印刷できる方式です。
ダンボールへのフレキソ印刷はオフセット印刷の精度のような写真やグラデーション、色の掛け合わせなどは再現できません。基本はダンボール印刷用インキ・標準色(18色)の中から選んで印刷します。オプション料金で補正色やオリジナルでインキを作製し使用することもできます。
■巻取印刷(プレプリント)【大ロット向き】
■枚葉印刷(シート印刷)【小ロットにも対応】
フレキソ印刷の注意点
●あまり小さな文字は再現不可(基本8pt以上推奨)
●細い線は基本1pt以上から推奨(バーコードなどの大きさは注意)
●色の掛け合わせやグラデーション、異なる色と色が近い(毛抜き合わせなど)は×
●基本は単色ベタで指定。ハーフトーンはアミ点で表現(モアレや潰れに注意)
●1色〜3色で表現するのが一般的
●多色刷り、版の面積が大きいものは版代が高額に
フチ付き・毛抜き合わせ
2色の境目に色を重ねることで可能。上記図のようには再現不可。印刷時ズレが発生。
色と色が近い
色が完全に重なってしまう。印刷時ズレが発生。
グラデーション
異なる色のグラデーションは不可。単色の場合アミ点処理で可能。〈右画像〉
影付き
ブラシのようなシャドウは再現不可。ズラしシャドウはズレが発生。
ベタ塗りの中に他の色
色が完全に重なるか、白の隙間ができてしまう。黄色の上に黒なら可能。
▲フルカラー写真は不可
▲単色2階調のアミ点で
上記のように注意する点が多いと、あまり印刷には適していないのではないか?と思うかもしれませんが、日本のダンボール印刷はほとんどがフレキソ印刷です。その理由はダンボールのような平滑性の悪いものにも印刷ができ、環境にやさしい水性インキで印刷するフレキソ印刷は油性インキなどと比べ使用するインキ量も少なくすみ、水に溶けやすくリサイクルしやすい点です。リサイクル率95%の環境負荷の低い優れたダンボールには、とても合った印刷方式と言えます。もともと配送用外装ケースのように社名や製品・商品名、製品番号等、中身の最低限の情報がわかれば良い印字印刷と違い、外装ケースでさえ美粧性のあるパッケージが増えてきているのが実情です。今後、国内でもさらに印刷再現度が高いフレキソ印刷機の登場が待ち望まれていることは必然です。
巻取印刷(プレプリント)
枚葉印刷(シート印刷)
❸ グラビア印刷
グラビア印刷とは、凹版印刷の一種で、あらかじめ印刷したい絵柄を鋼鉄製シリンダーに彫り込まれた「版の凹み」にインキを転移させ、さらに版のインキをフィルムや紙のような基材に転写させる方式です。フレキソ印刷よりも高細度な印刷が可能です。ダンボール印刷の場合、プレプリント巻取印刷が基本です。壁紙や建材などの細かなディテールを再現する印刷などにも使われます。
木目調のグラビア印刷
■プレプリント【大ロット向き】
❹ カラーライナ・ファンシーペーパー
一般的に美粧ダンボールとは美粧印刷された刷本を片面ダンボールに合紙することを意味しますが、色付きのカラーダンボールやエンボス加工や印刷されたファンシーペーパーを使用して貼合されたダンボールも美粧ダンボールと位置付けても良いと思われます。美粧段ボールメーカーと言われる企業はこのような美しいダンボールを自ら製造できる、数少ない企業でもあります。カラーライナを効果的に使うことでダンボールとは思えない美粧性やブランド性を発揮することが可能です。
■カラーライナにフレキソ印刷
■中芯にカラーライナを使用
■ファンシーペーパーに箔押
※箔押とは金、銀、メタリック、ホログラムなどの箔を箔版とプレス機によって熱と圧力で紙などに転写する特殊印刷です。ホットプレスとも言われます。ロゴや線画などを転写し高級感を演出します。
❺ その他
インクジェット印刷 【小ロット向き】
スクリーン印刷【小ロット向き】
まとめ
●一般的には板紙オフセット印刷をダンボールに合紙したものを「美粧ダンボール」という。
●上記以外のフレキソ印刷をはじめ、その他のダンボール印刷やカラーダンボール、箔押加工など、美粧性を伴う加工を施したダンボールも美粧ダンボールと言って良いのではないかと思います。
●板紙を合紙した場合、ダンボールの持つ機能性もプラスされるので、板紙単体より強度が高く、保冷保温性も増した材質になる。